今日はシャワーをしたが、夕方にはそれを忘れて着替えてしまいそうだった。あと、向かいのハラダさんが夕食直後にポテチをクチャ食いして耳ざわりだ。

向かいのハラダさんは、天パでヒョロ長く、灰色のスウェットしか持っていない。一人言が多く、何かを書きつけるためのノートがある。へんなところ、たとえばろう下や、病室のすきまにしゃがんでノートと話している。コータくんとモサメガネくんとテーブルゲームをしているところを見ると、悪い人ではなさそうだ。でも全力でファンタとかコーラとか飲んでいる。

スマホで連絡をしようとしたが、ステーションに誰もいなかったので、めんどくさいし眠いのでやめた。こっちは病人である。こっちに期待するのも変な話だ。
右隣にいるのはハラグチさん。ツルハゲで私の父と同い年で、同室になった時にあいさつしてくれた。食堂では、フタを置くところを教えてくれた。10日以上隣だが、お菓子を食べる音が聞こえるだけで、やはり疲れているのかもしれない。あと、ガラケーを閉じる音も聞こえる。時間を見ているのか。

今日は恩田陸の、題名の長い本を読み始めた。あと、ナンプレのハガキを出すのは1枚だけに決めた。あとは、明日考えればいい。


頼もしい、一歩。

体感的に一番の不調を味わった。スマホで何を伝えるか考え、4ヶ月先まで想像の中で旅行をして午前が終わった。締め切りや約束を守るというようなレベルではないのだ。基本は寝る、なのだ。

午後の半分は寝て、半分は『くもを探す』を読んだ。少なくとも自分にとっては、今の仕事はそうとうに自分を殺し続けていることなのだろう、とひしひしと感じる。だってのにこのうつというものは、やる気そのものが失せるのだ。「ひたすら弱い身体の、ボスはわたしだ」という言葉を借りるなら、「ひたすら強い身体だが、すべての判断ができない下っぱだ」。これがまともな状態なわけがない。だが、休んでるし、入院している。おれよ、よかったな。入院できて。

前もそうだが、おカネのことが特に気になる。最高1万円分のミス、示談にしてもらえるに決まっている。みんな、どうでもいいよと思いながら、前年度収支決済を見ているではないか。言われたら返す。未来のことを考える必要はない。今、未来のことを考える必要があるとすれば、これから先、1ヶ月分必要なメシが全部目の前にある、と思えばいい。そんなこと考えても考えなくてもいっしょ。ムダだ。

西さんの本で「なぎさ」を書いた人が亡くなっていることがわかった。それと知らずに読み、心を打たれ、それを知り、なんとなくショックだった。何にしろ、作品がそこにあるのは変わらないのに、どこか遠くへ行って、さわれなくなった気がする。もともと、さわろうともしてなかったのに。なんとなく、惜しい。


頼もしい、一歩。


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感想(14件)

思い通りに洗濯ができてよかった。今日はこの入院の人について書く。

まず、うるさいじいさん。歯もつけず、小さな声で話すということも知らず、食べものの介助をせがんでは、あとまわしにされている。電話の前で、何かにキレている。この人が一番うるさい。ヨレヨレになったシャツと、青白ストライプズボンの、絵に描いたような昭和じいさんだ。

ミワさん。声があきらかにそう。見た目はハウルの動く城の荒地の魔女。一人言が多く過ごし、2回くらい話しかけられ、あしらった。テレビのテロップを音読していることが多く、競馬やダルビッシュなども視聴範囲。

コータくんとモサメガネ。ちょっと悪口っぽいが、将棋、ポーカー、オセロなどテーブルゲームを最近し始めた、平和な人たち。メガネの人は若く、かなりシャキっとしている。コータくんの方はたどたどしいしゃべりのことが多い。背が高く、肌の色が白い。

ヒラノユウタ。キンプリやスマップの名前をくっつけて病院の人に聞いてもらったり、おやつがほしいと駄々をこねる問題児。茶髪にセンター分けでヘアスタイルは相葉くんみたいだが、雰囲気は完全にオズワルドのメガネの方。

今日のところはこのくらいにしておこう。意外と入れ替わりがあるな、と感じるが、これから変わらなくなるかもしれない。

1日かけて『漁港の肉子ちゃん』を読んだ。いつもの西さんらしく、ありのままでいいんやで、の話だ。なぜか勇気づけられた。スマホを使うつもりだったが、昼寝したらできなかった。何より一番、エロ禁ができている。

頼もしい、一歩。

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