今日は29日だったか。はっきり覚えているのはスマホでメールが届いていたのを見たことと、『真昼の月を追いかけて』を読み切ったことだった。

ここには書いていない、Yさんが一時帰宅するらしく、コメに、スーパーに行くのに、灯油に、生活の心配が多いようだ。病気の心配は?スーパーは遠いが、近所の人が1000円で乗せていってくれて、1万5000円くらいまとめ買いするらしい。病気は?

朝、起きているようにしたら昼寝ができなかった。できなかったというより、寝ようとしても起きていられた。なんだか進歩な気がするが、元に戻ってもいい。仕事を辞めることを考えるため、傷病手当と失業手当のことを調べた。病気を治すのと、職を探すのでシステムを分けるとは、なんとも日本の細やかさが出ている。細かいことよりも、数字が目に入った。家族で実家に行けば、うつは出なくなるだろうか。この、やってみなくちゃ分からない、でずーっと病気を引きずってきた気がした。もう十分チャレンジしたってことない?職探しの大変さなんて知らないが、このまま続けることもチャレンジであることを考えてほしい。

ミワさんが何かのテレビを見て大笑いしている。妻もこのタイプだった。いわゆる肉子ちゃんタイプだ。代わりに喜んでくれると、こちらもうれしくなる。それが一番の幸せだったのだけれど、今は会えないので、難しい。


頼もしい、一歩。

今日はシャワーをしたが、夕方にはそれを忘れて着替えてしまいそうだった。あと、向かいのハラダさんが夕食直後にポテチをクチャ食いして耳ざわりだ。

向かいのハラダさんは、天パでヒョロ長く、灰色のスウェットしか持っていない。一人言が多く、何かを書きつけるためのノートがある。へんなところ、たとえばろう下や、病室のすきまにしゃがんでノートと話している。コータくんとモサメガネくんとテーブルゲームをしているところを見ると、悪い人ではなさそうだ。でも全力でファンタとかコーラとか飲んでいる。

スマホで連絡をしようとしたが、ステーションに誰もいなかったので、めんどくさいし眠いのでやめた。こっちは病人である。こっちに期待するのも変な話だ。
右隣にいるのはハラグチさん。ツルハゲで私の父と同い年で、同室になった時にあいさつしてくれた。食堂では、フタを置くところを教えてくれた。10日以上隣だが、お菓子を食べる音が聞こえるだけで、やはり疲れているのかもしれない。あと、ガラケーを閉じる音も聞こえる。時間を見ているのか。

今日は恩田陸の、題名の長い本を読み始めた。あと、ナンプレのハガキを出すのは1枚だけに決めた。あとは、明日考えればいい。


頼もしい、一歩。

体感的に一番の不調を味わった。スマホで何を伝えるか考え、4ヶ月先まで想像の中で旅行をして午前が終わった。締め切りや約束を守るというようなレベルではないのだ。基本は寝る、なのだ。

午後の半分は寝て、半分は『くもを探す』を読んだ。少なくとも自分にとっては、今の仕事はそうとうに自分を殺し続けていることなのだろう、とひしひしと感じる。だってのにこのうつというものは、やる気そのものが失せるのだ。「ひたすら弱い身体の、ボスはわたしだ」という言葉を借りるなら、「ひたすら強い身体だが、すべての判断ができない下っぱだ」。これがまともな状態なわけがない。だが、休んでるし、入院している。おれよ、よかったな。入院できて。

前もそうだが、おカネのことが特に気になる。最高1万円分のミス、示談にしてもらえるに決まっている。みんな、どうでもいいよと思いながら、前年度収支決済を見ているではないか。言われたら返す。未来のことを考える必要はない。今、未来のことを考える必要があるとすれば、これから先、1ヶ月分必要なメシが全部目の前にある、と思えばいい。そんなこと考えても考えなくてもいっしょ。ムダだ。

西さんの本で「なぎさ」を書いた人が亡くなっていることがわかった。それと知らずに読み、心を打たれ、それを知り、なんとなくショックだった。何にしろ、作品がそこにあるのは変わらないのに、どこか遠くへ行って、さわれなくなった気がする。もともと、さわろうともしてなかったのに。なんとなく、惜しい。


頼もしい、一歩。


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